最近よんだ本

鷺と雪

鷺と雪

直木賞受賞作らしい。『街の灯』ではなく『玻璃の天』でもなく『鷺と雪』で受賞なところに直木賞の傾向が見える。やっぱり能天気に明るい話で受賞させては直木賞の権威が落ちるんだろう。三部作で主人公が同じなので三作とも基本的には昭和初期のお嬢様の暇つぶし謎解きなんだが、時系列で書かれているので『鷺と雪』では戦争により近づいてきている関係で前二作と比べると若干暗めではある。しかもクライマックスが2.26事件だ。ラストの重厚感はいうまでもない。というより2.26事件を出されては能天気になりようもない。はっきり言って反則技だ。三作を比べると私は『街の灯』が一番面白いように思うがそれはおそらく私が北村薫の著作のなかで私シリーズが一番好きなせいだろう。


TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 (朝日文庫)

TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 (朝日文庫)

トカゲという名称を初めて知ったのは乃南アサ『凍える牙』だった。音道貴子のシリーズではいつの間にかトカゲ設定が消えてしまったが、トカゲという名称はその後も忘れることはなかった。この小説はトカゲであり、かつ特殊捜査班(SIT)所属の女性刑事が活躍する誘拐事件ものだ。トカゲでSIT。米倉涼子がバイクに乗って極秘捜査するようなもんだ。ちなみに『交渉人』は見ていなかった。ただこの小説はトカゲがメインではなく、メインはあくまでも犯人とのかけ引きや、何故ボイスチェンジャーを使うのか、何故身代金の受け渡しにその口座を指定したのかなどの謎解きだ。最後はページ数の関係なのか少々尻すぼみになるが、シリーズ化されているようなので次作に期待だ。