まつがい

10年程前、まだ今のマンションに越して来る前の話です。仕事を終えて帰宅すると留守電が入っていました。聞いてみると「お母さんです。ケンちゃん、ちゃんとご飯食べてるの?電話ください」と、どうやら東京に上京した息子を心配する郷里の母親からのようでした。お母さんの訛り具合から上京したと推理したのですが、それが間違っていなかったことは後々分かりました。その当時ナンバーディスプレイ機能も付いてない電話機を使っていたので間違いを教えて差し上げることも出来ず、まあそのうち気付くだろうという気持ちもあり放置していました。でも毎日描けて来るんですよ。毎日家に帰るとケンちゃんのお母さんからの留守電を聞くのが当時の日課でした。そのうち一向に連絡を寄越さない息子を心配する気持ちが高じて電話口で泣き出すケンまま。やっと直接話せたのは初めて電話を掛けて来た頃から一月は経っていました。「番号違ってますよ」と初めて教えて上げられた訳ですが、番号を聞くと確かに家の番号で合ってます。そうです。間違っていたのはケンちゃんだったのです。そこから色々話をしてお母さんが東北に住んでいることやケンちゃんが東京の大学に通っている等の情報を得ました。「大学に聞いてみたらいかがでしょう」と提案してやっと納得してくれましたがこの会話、午前1時過ぎ。30分は話してたと思います。その後無事に息子と連絡がとれました、という留守電が入っていてちょっとほっとしました。
なんでこんなことを今更書くのかといえば『笑った間違い電話トピ』を読んだから。
そういえば今のうちには吉田さん宛ての間違い電話がよく掛かって来ます。吉田さん宅には来年成人式の娘さんがいて、振袖を着るのを嫌がっているらしいです。ちょっと下に妹さんもいるらしく、更に今どきの家庭には珍しくお祖父ちゃんお祖母ちゃんも同居している模様。お祖父ちゃんの趣味は囲碁です。
会った事もない方々の家庭事情に精通しつつある現在。うちの電話機もナンバーディスプレイ機能付きに進化していますが、なんとなく楽しみで教えてあげる事はしていません。吉田さんの娘さんは親戚のおばちゃんの剣幕に押されて振袖に手を通すのか。楽しみだなあ。『ほぼ日刊イトイ新聞』のまつがいのコンテンツではまつがい電話が一番好きです。楽しいなあ間違い電話。